石川潤平工房ならではの製作工程
石川潤平工房の作品では、最初に絵画や彫刻などの芸術分野を学び身につけた作家が冠から座台までを含めた造形を、美術的・視覚的に安定感のある正三角形に納まるようにデッサンします。それをもとに彫刻(粘土)で立体にし、お顔や冠、手、胸などそれぞれの部分を同一工房内の職人が制作します。
正絹植え込み結髪
石川潤平工房のすべての雛人形の髪は、「スガ」と呼ばれる正絹糸を使用し、「正絹植え込み結髪」という伝統技法で作られています。一般的にはナイロン糸製なのですが、正絹糸を使う理由は、しっかりとした自然な風合いが髪に出てくるからです。髪型には古典下げ髪とおすべかしの二種類があります。古典下げ髪は、平安時代に誕生した日本古来の髪型で、おすべらかしは江戸時代後期に完成された比較的新しい髪型です。
爪まで彩色した自然な指先
高貴な人はめったに肌を見せないために殿の左手は自然に裾を握るようなしぐさになります。
石川潤平工房では、デッサンに基づいた理想の形にするため、作品一つ一つに合わせた大きさや形の手を作成しています。一般品は既製の共通部分の手を使うので、殿の左手は姫の手を兼用するため指を伸ばしたままになっています。
結び紐のない式正冠
平安時代の日本人の冠の正式なつけ方です。冠の内部の「マゲ」に串をさして固定していますので、余分な取り付けひもがありません。この方式で冠を固定するためには、頭の大きさと冠の大きさ・冠の形とマゲの位置・差込穴とマゲの穴の位置がそれぞれぴったり合っていることが必要です。頭師・結髪師・冠の作者が三位一体とならなければ絶対に不可能であり、石川潤平工房ならではの取り付け方法です。
写真は、クリックすると拡大できます
写真下の寸法は赤もうせんに金屏風で飾った場合の目安です